どのような「街」のどのような「家」に住むのか、といったことは、私たちの幸福に大きな影響をもたらします。私たちが家から享受する「幸福」、つまり効用は、どの国でも25%から30%と極めて高い水準にあることが知られています。そのような幸福に貢献しているのが、「不動産業」となります。本コンテストは、テクノロジーの力により、不動産業の進化の可能性を探求し、私たちの幸福をどれだけ高めることができるのかを競うことを目的としたコンテストです。
本コンテストは、単なる技術を競うだけのものではありません。技術は、単なる「道具」にしかすぎません。どんなに優れた「道具」を作っても、社会では、その道具は使われないとことは、しばしば起こることです。その原因の多くは、技術者が社会との対話が不十分だったり、独善的になってしまったりすることが原因です。Googleをはじめとするテクノロジーの恩恵を受けて大きく成長している企業では、社会課題・事業課題を発見し、事業開発を行う専門家と、テクノロジーを用いてそれをサポートする専門家が協業しています。本コンテストでは、「実用性の高いテクノロジーの開発を通じた不動産業の進化の可能性」、それを通じて「社会がどれだけ幸福になれるのか」、といった視点を重視します。
2019年4月、東京大学空間情報科学研究センター内に不動産情報科学研究部門が設置されました。研究室は千葉県柏市の東大柏キャンパスにあります。同研究部門では、マサチューセッツ工科大学やシンガポール国立大学、ケンブリッジ大学、香港大学、清華大学をはじめとする世界の不動産研究またはビッグデータ解析の拠点を持つ大学と連携して、不動産のビッグデータを用いた世界の最先端研究をしています。海外の大学と共同研究を進めている3名の教員と、日本の民間企業と共同研究を進めている2名の研究員が、皆さんを指導していきます。また、同じく千葉県柏市にある麗澤大学には、2019年にAI・ビジネス研究センターが、2020年に都市・不動産科学研究センターが設置されました。AI・ビジネス研究センターでは、テクノロジーの進化の恩恵を受けながら、どのように企業が成長していくことができるのか、といったテーマで研究・教育をしています。都市・不動産科学研究センターでは、都市と不動産市場の中に潜む社会課題解決ができる人材育成のためのカリキュラム開発をしています。東京大学からは2名の教授が、麗澤大学からは3名の教授が、そして、社会実践部門を代表して本コンテストを協賛していただくこととなったハウスコムの代表を入れて、7名が審査員を務めます。二つの大学と社会実践をしている産業界が協力し合い、株式会社LIFULLから住宅市場で実際に流通しているビッグデータを提供いただくことで、不動産ビッグデータを用いて研究開発されている世界の最先端のテクノロジーの一端に触れ、不動産市場に潜む社会課題を理解したうえで、テクノロジーを用いた社会課題解決ができる人材育成プログラムを提供することが可能となりました。
技術は習得することが可能です。ただし、皆さんの努力が必要です。そのため、選抜型のコンテストとなっており、次のステップに進むためには予測アルゴリズム開発とアプリ開発に関する課題をクリアしていく方式となっています。各ステップにおいて学習プログラムを用意しているため、プログラミング初心者や、これまでデータサイエンスもしくはアプリ開発のどちらか一方しかやったことがない方にも応募可能なコンテストとなっています。
世の中で通用するAIサービスを開発できるように、コンテスト期間中に不動産に関する実データを扱い、第一線で活躍する研究者や実務者とのインタラクションの機会を設けていきます。単なるプログラマーとしてではなく、自ら世界観やユーザー理解を深めて、社会課題解決ができるAIサービスをつくるための課題感とインサイトを養成していきます。
あなたの挑戦をお待ちしています。
AI・ビジネス人材の必要性
近年、AIなどの新しいテクノロジーが社会で広く活用されるようになってきました。不動産業界においても同様で、RealTech(Real Estate Technology)と呼ばれる産業も生まれてきています。マサチューセッツ工科大学不動産研究センターは、「未来の不動産市場」と題したレポートを2018年に発表しましたが、RealTechは急速に成長していくことが予測されています。MITのレポートについては、最初の講義で皆さんにも勉強していただくことから出発します。
テクノロジーの恩恵を受けやすかった小売業界や金融業界では、テクノロジーの進化を受けてイノベーションが生まれつつあります。一方、不動産業界では未だに手つかずの領域が無数に存在しています。その背景には、AIなどの技術性能が専門性の高い人間の領域まで到達することができていなかったり、AIを作るためのデータ資源が不足していたり、業界内に技術を正しく理解し活用できる人材が不足していたりするなど、多岐にわたる要因が根強くあり、特有の難しさがあります。
こうした難しさに対応するためには、正しい技術的限界を理解し、不動産ビジネスを理解し、産業の中で働く人間が持つタスクの整理と機械が優位性を持つタスクを特定し、経営の視点からその費用を理解して、企業の中に装着させていかなければなりません。技術だけに走ってしまい、予測精度の高さだけにこだわったアルゴリズムを作ったり、見栄えだけのいいようなシステムを作ったりするだけで、企業では評価されないといったような幾多の失敗を目の当たりにしてきました。端的には、現場やユーザー次第で提供方法を柔軟に変えられる力、ビジネス課題やユーザー課題を読み解き数理的またはシステム的に表現できる力などが必要になってきます。不動産業界だけに限りませんが、消費者の視点を何よりも重視し、業界という需要側だけでなく、エンジニアやデータサイエンティストと呼ばれる供給側にとっても、顧客ニーズに合わせた社会課題解決可能なAI・ビジネス人材の育成が、日に日に高まってきていると言えるでしょう。
報酬は社会実装
東京大学空間情報科学研究センター不動産情報科学研究部門では、多数の研究成果を社会実装しています。これまでに研究室で開発された技術は、皆さんが知らず知らずのうちに利用している可能性もあります。本コンテストで勝ち抜いた勝者には、東京大学空間情報科学研究センター不動産情報科学研究部門・麗澤大学都市不動産科学研究センターがサポートし、社会実装実験に参加する機会が提供されます。社会実装には、社会に向けて発信する場所、そして実際のデータが必要となります。その社会実装実験には、ハウスコム株式会社の協力をいただけることとなりました。
本コンテストが実現したいのは、AIブームに便乗したお祭りでも、一過性の作品でもありません。自らの手で本当に社会を変革しうるプロダクトをつくりだすことです。実質的に本コンテストが提供できるのは、AI・ビジネスパーソンになるための"キッカケ”までとなりますが、その後大きく羽ばたくための一押しとして、社会実装を目指して継続的にサポートを行っていきます。
開催時期 | 2020年8月3日から9月19日 |
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開催場所 | コロナ感染拡大を受け、全プログラムをオンラインで開催します。 最終日のみ麗澤大学にて表彰式の開催を予定しています。 |
参加資格 | 2020年9月1日段階で、国籍を問わず高校・高専・大学・大学院に在籍するもの。 |
参加費 | 無料 |
持ち物 | PC、インターネット通信環境 |
参加資格 | 2020年9月1日段階で、国籍を問わず高校・高専・大学・大学院に在籍するもの。 |
主催: 東京大学空間情報科学研究センター不動産情報科学研究部門、麗澤大学都市・不動産科学研究センター
協賛: ハウスコム株式会社
運営: テックプレナー株式会社